細野ファン視点で星野源選曲の細野晴臣ベスト盤を語る 『HOSONO HARUOMI compiled by HOSHINO GEN』

細野晴臣のデビュー50周年を記念して、星野源と小山田圭吾それぞれの選曲によるレコード会社の垣根を超えたベスト盤が制作されている。

気になるのはやはり選曲。ということで、細野ファンの視点から二人の選曲を見ていきたい。まずは星野源選曲盤から。

(小山田圭吾の選曲したベスト盤についてはこちら。)

HOSONO HARUOMI Compiled by HOSHINO GEN


Amazon:HOSONO HARUOMI Compiled by HOSHINO GEN(2CD)

収録曲/ アーティスト [オリジナル収録アルバム]
しんしんしん/ はっぴいえんど [はっぴいえんど]
ありがとう/ 小坂 忠 [ありがとう]
風をあつめて/ はっぴいえんど [風街ろまん]
暗闇坂むささび変化/ はっぴいえんど [風街ろまん]
あしたてんきになあれ/ はっぴいえんど [風街ろまん]
風来坊/ はっぴいえんど [ HARRY SINGING (1969-1978)(HOSONO BOX 1969-2000 Disc1)]
僕は一寸/ 細野晴臣 [HOSONO HOUSE]
パーティー/ 細野晴臣 [HOSONO HOUSE]
冬越え/ 細野晴臣 [HOSONO HOUSE]
恋は桃色/ 細野晴臣 [HOSONO HOUSE]
CHATTANOOGA CHOO CHOO/ 細野晴臣 [TROPICAL DANDY]
絹街道/ 細野晴臣 [TROPICAL DANDY]
YELLOW MAGIC CARNIVAL/ ティン・パン・アレー [キャラメル・ママ]
Firecracker/ ハリー細野 & TIN PAN ALLEY [ハリー細野 & TIN PAN ALLEY IN CHINATOWN (Crown Years 1974-1977 Disc3)]
蝶々-San/ 細野晴臣 [泰安洋行]
Roochoo Gumbo/ 細野晴臣 [泰安洋行]
Pom Pom 蒸気/ 細野晴臣 [泰安洋行]
四面道歌/ 細野晴臣 & イエロー・マジック・バンド [はらいそ]
ウォリー・ビーズ/ 細野晴臣 & イエロー・マジック・バンド [はらいそ]
はらいそ/ 細野晴臣 & イエロー・マジック・バンド [はらいそ]
Firecracker/ Yellow Magic Orchestra [YELLOW MAGIC ORCHESTRA (US版)]
Simoon/ Yellow Magic Orchestra [YELLOW MAGIC ORCHESTRA (US版)]
Cosmic Surfin’/ Yellow Magic Orchestra [YELLOW MAGIC ORCHESTRA (US版)]
Mad Pierrot/ Yellow Magic Orchestra [YELLOW MAGIC ORCHESTRA (US版)]
Absolute Ego Dance/ Yellow Magic Orchestra [SOLID STATE SURVIVOR]
スポーツマン/ 細野晴臣 [フィルハーモニー]
三国志メイン・テーマ/ 細野晴臣 [三国志]
Lotus Love/ Yellow Magic Orchestra [浮気なぼくら]
以心電信/ Yellow Magic Orchestra [SERVICE]
エンド・テーマ「銀河鉄道の夜」/ 細野晴臣 [銀河鉄道の夜・特別版]
PLEOCENE/ 細野晴臣 [omni Sight Seeing]
日本の人/ HIS [日本の人]
Omukae de gonsu/ 細野晴臣 [ATOM KIDS Tribute To The King “O.T”].
Fujiyama Mama/ Tin Pan [Tin Pan]
GOKIGEN IKAGA 1・2・3/ SKETCH SHOW [Strange Flowers Vol.1]
MARS/ SKETCH SHOW [LOOPHOLE]
悲しみのラッキースター/ 細野晴臣 [HoSoNoVa]
僕は一寸・夏編/ 細野晴臣 [HOCHONO HOUSE]
全38曲

Amazon | HOSONO HARUOMI Compiled by HOSHINO GEN(2CD) | 細野 晴臣 | J-POP | 音楽

星野の選曲は細野ファンからすると「これは外せない!」というような定番の人気曲が多い印象。その中でもポップで明るい曲を中心に選んでいるように思えた。星野自身も言っていたがマイナーなものには偏らない選曲をしているようだ。なお、曲順は時系列に沿ったものになっている。

定番の選曲

アルバムの前半には特に細野ファンには定番の曲が多くセレクトされている。

例えば日本語ロックの開拓者、はっぴいえんど1stからのM1「しんしんしん」は細野最初期の名曲だし、2nd『風街ろまん』からのM3「風をあつめて」は最近でもサカナクションの山口一郎がCMでカバーしていた代表曲。星野もそのボソボソとした歌い方に影響を受けたという1stソロアルバムの『HOSONO HOUSE』からはどの曲が選ばれても不思議ではない。

さらに、エキゾチカの巨匠マーティン・デニーなどに影響を受け、海外から見た日本のイメージを自身の音楽表現に組み込んでいた70年代に発表された3枚のアルバム『トロピカル・ダンディー』、『泰安洋行』、『はらいそ』はどれもが細野ファンの高い支持を受ける人気作。これらのアルバムはSAKEROCKの直接的なルーツでもあるだろうし、特にM12の「絹街道」は星野の「」に影響を与えた曲でもある。「恋」では中国の弦楽器、二胡が東洋的なメロディーを奏でるが、あのようなアレンジには正にこの時期の細野の影響がうかがえる。M17の「Pom Pom蒸気」もSAKEROCKでカバーされた曲だ。

その上さらにテクノポップの先駆者、YMOの1stアルバムのUS版からは4曲もセレクトされているが、どれもが初期YMOを代表する名曲。星野源のアルバム『Yellow Dancer』のジャケットの元ネタもこのYMOの1stのUS版である。M24の「Mad Pierrot」は星野の「時よ」に影響を与えた曲で、シンセサイザーの音色などに似たところを見つけられる。

その他、M26「スポーツマン」は国内外のYMOファンに人気のテクノポップの名曲だし、神秘主義的な後期YMOのM28「Lotus Love」や、宮沢賢治原作のアニメ映画「銀河鉄道の夜」のサントラも評価の高いもの。さらにはその「銀河鉄道の夜」のサントラ収録曲「プリオシン海岸」を発展させたM31Pleocene」も80年代末のアラブ音楽などディープな音楽世界に邁進していた細野作の中で一際ポップな響きを持つ名曲。

とまあ、細野ファンから見れば、かなりの部分は選曲されて当然と思えるような曲で構成されている。

意外な選曲

しかし当然と思える選曲もあれば、「これを入れるの!?」と思わせられた意外な選曲もいくつかある。むしろそういうものにこそ星野源の好みが感じられたりしておもしろい。

まず、M27「三国志のテーマ」。NHKで82年から84年に放映されていた「人形劇 三国志」のテーマ曲だが、「よくこれを選んだな」というちょっとマニアックな選曲。多くの人に聴かれた曲ではあるのだろうが、星野は81年生まれで、番組を見ていた世代でもなさそうだし普通に曲として好きなのか。

M29YMO「以心電心」は作詞こそ細野が手掛けているが、作曲は坂本龍一と高橋幸宏によるもの。私からすると坂本、高橋要素の方を強く感じる曲なので、選曲されていること自体驚きだが、自分で自分を助ける「自助」をテーマにした温かみのある歌詞に星野は惹かれたのかもしれない。

M33「Omukae de gonsu」は漫画の神様、手塚治虫の生誕70周年を記念したトリビュートアルバムの収録曲。「オムカエデゴンス」を決め台詞とするキャラクターをモチーフにしたコミカルでかわいらしい曲だが、やはりかなりマイナーな部類の曲で、星野の好みがうかがえる選曲。

M35「GOKIGEN IKAGA 1・2・3」 は細野と高橋幸宏のエレクトロニカ・ユニット、SKETCH SHOWの曲。SKETCH SHOWの1stアルバムにも収録されている曲だが、選曲されたのは細野主宰のレーベル、デイジーワールドのコンピ『Strange Flowers Vol.1』に収録されているバージョンで若干の違いがある。これまたマニアックな選曲とも思えるが、星野の初期のソロ作はデイジーワールドからのリリースだったことを考えると、そう意外なことでもないのかもしれない。オリジナルはスネークマンショーへの細野提供曲「咲坂と桃内のごきげんいかが1・2・3」で日本初の日本語ラップと言われることもある曲。リズムの元ネタはSly & The Family Stoneの「In Time」か?

そして、ある意味一番意外な選曲だったのは、同じくSKETCH SHOWM36の「Mars」。この曲は純然たるエレクトロニカで星野の作風や好みからも遠く思えるものだが、しかし電子音を主体としながらも温かみやかわいらしさも感じさせるところには、いかにも細野晴臣らしさがある。そう考えると確かにこのベスト盤に収録されていてもおかしくない曲かもしれない。

総評

このベスト盤の選曲を通して感じるのはポップさだ。細野晴臣の音楽性は幅広く、その中には親しみやすい曲もあれば、理解されづらいものも沢山ある。星野はそういった中から初めて細野晴臣の音楽に触れる人にも理解できる、何か感じるものがあるような曲を選曲しているように思えた。星野が自分の好きな曲を選んだら勝手にそうなったのかもしれない。

このベスト盤は細野晴臣の音楽性の全体を表すようなものではないのだが、細野ファンにも人気の高い曲を相当数抑えているのは確かなので、やっぱり細野晴臣入門に丁度良いアルバムといえるかもしれない。

続いて小山田圭吾の選曲したベスト盤について。

タイトルとURLをコピーしました