【本】岡本敏子「芸術は爆発だ!岡本太郎 痛快語録」─岡本太郎の生き様と魅力─

─本の紹介と感想─

岡本敏子著「芸術は爆発だ!岡本太郎 痛快語録」は岡本太郎のパートナーだった岡本敏子が太郎の言葉やエピソードを引き合いに、その生き様や人生哲学を解説、紹介したもの。全三部構成になっていて、一部と三部が「岡本太郎の人生」について、二部は「岡本太郎の恋愛論」を紹介するものになっている。


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この本はすごくおもしろかった。もう出てくるエピソードがことごとくおもしろい。おもしろいというより岡本太郎の生き様、純粋さに感銘を受けたというほうが正しいかもしれない。


─内容の紹介─

まずもう序盤で紹介される太郎の母親で作家だった岡本かの子のエピソードからしてかなりぶっ飛んでいる。かの子は芸術と文学に全ての情熱を注いでいた人らしく、その代わりに家事育児には全く無頓着で、太郎の後に産まれた二人の妹弟はどちらも赤ちゃんの内に亡くなっているのだが、その原因はかの子が赤ちゃんを寝かしておいたのを忘れてつまづいて̬蹴飛ばしたからだというのだ。太郎曰く「お袋に蹴飛ばされて死んじゃったんだよ。オレも随分つまづいたり蹴飛ばされたりしたんだろうけど、生来頑丈だったから生き延びたんだろうね」らしい。

また、かの子は太郎に何一つ隠し事をしなかったらしく、男女のことからなにから何でも打ち明けたそうだ。かなり変わっているが、しかし太郎はそんなかの子を敬愛しているというか気に入っており、良い親子関係とはどういうものかと考えさせられる。

知らなかったのが、太郎が子供の頃に執拗ないじめにあっていて、毎日自殺を考えていたという話で、後の岡本太郎を思うとかなり意外なのだが、そのいじめられていた理由というのがガキ大将の言うことを絶対に聞かず反抗していたからというのはあまりに太郎らしかった。そしてそれほどの絶望に追い込んだガキ大将に対しても、大人になったら過去にとらわれず「いやあ、君には随分いじめられたよなあ」なんてあっけらかんと話しかけているのもおもしろい。基本的に過去には執着しない人らしい。

18歳でフランスに渡った後では、フランス語を勉強してヘーゲルの美学の講義を受けるはずが、教授が変わった人でカントの「純粋理性批判」の講義を一年受けることになったとか、精神分裂病の講義を受けて症状が全部自分に当てはまっていると愕然としたり、ジョルジュ・バタイユの秘密結社に入って森の中で秘密の儀式をしたり(詳細不明)、パリで勇気を出してナンパをするようになった、などなどのユニークで型にはまらない、それでいて知的でもある太郎像が伺える。

長野県で行われる大木にまたがって急な坂を下る御柱祭に参加したときには、自分も大木にまたがって坂を下ろうとするのを「それだけはやめてください。死んでしまいますよ」と止められ、「死んで何が悪い。祭りだろ」と返したという。おもしろすぎる。別の項で太郎は「死の戦慄があるからこそ生の歓喜もありうる」とも語っている。

最も印象深かったのは恋愛論の部の最初に出てくる、女性が不当に扱われることへの太郎の憤りを岡本敏子が端的に表した文章で、“人間として、抑圧しようとするものに対する無条件の怒り、反抗。”というもの。ここに人間の品格というか高潔さを強く感じ、感銘を受けた。


他にも沢山おもしろい話が紹介されているのだが、とにかく岡本太郎というのは本当に破格の人間だと思う。単にめちゃくちゃなことをやっていた風変りなおじさんではない。その生き様、言動の裏には太郎が人間として猛烈に生きてきたからこそ得られた人生哲学がある。普通とは真逆の方向に突き進むような生き方をしているからこそ、そこにこんな生き方もあるのかと啓発させられるのだ。

岡本敏子が岡本太郎の生き様を伝えたいと思うのがよくわかる。確かにそういう魅力のある人間だ。

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