【音楽】YMO結成40周年記念コンピ「NEUE TANZ」のリマスタリングに感動する

イエロー・マジック・オーケストラの結成40周年を記念するコンピレーションアルバム「NEUE TANZ」が10月17日にリリースされたので、さっそく聴いた感想を書こうと思う。

選曲・監修はテイ・トウワ、リマスタリングは砂原良徳、ジャケットは現代美術家の五木田智央が手掛けている。


今作はテイ・トウワがニューヨークのレコード屋で店員に「毎日、『YMOのレコードはありますか?』と若者がやってくる」という話を聞かされ、そういう若者のためにYMOのレコードを作ろうと思い立ったことから製作されたらしい。

YMO結成40周年記念コンピ「NEUE TANZ」

そもそも自分はYMOファンなので、このコンピに収録されている曲の大半はすでに所持している。だから、特に期待することもなく聴いてみたのだが良い意味で裏切られた。

しかし、まずはその選曲がどのようなものかということについて簡単に私見を述べよう。

選曲について

今作はテイ・トウワによって”今響かせたいYMO”という視点で選曲されている。

特徴的なのは、このコンピにはYMOの代表曲である「ライディーン」や「君に、胸キュン。」は収録されていないということだ。その代わりに目立つのがYMOがその活動の後期に制作した楽曲たちだ。

一般的なYMOのパブリックイメージといえば、ピコピコしたテクノポップサウンドの先駆者ということになるが、それはYMOの初期のスタイルでしかなく(それももちろん最高だし、大好きだが)、YMOファンに評価が高いのは後期に制作された2枚のアルバム「BGM」と「テクノデリック」なのだ。(YMOのwikipediaでは中期となっている。期で分けるならその方が適切かも。まあそれは置いといて。)

この2作を大雑把に解説すれば、「BGM」はヨーロッパのニューウェーブの影響を受け退廃的かつ耽美的なサウンドを作り上げたアルバムで、「テクノデリック」は当時出来たばかりのサンプラーも用いて、現代音楽や民族音楽、サイケデリック・ロックの影響を取り込んだ完成度の高いコンセプチュアルなアルバムだ。

「NEUE TANZ」には、この2作からの選曲が多く、また他の曲も世間がイメージするYMOらしい曲というよりかは音楽的な評価の高いものばかりだ。つまりは、懐古的にYMOのヒット曲を楽しみたい人向けのベスト盤ではなく、音楽ファン向けの選曲と言えるかもしれない。

YMOファンが支持するYMOの楽曲が収録されたコンピレーションアルバムと言うこともできるだろうし、または、すでにYMOファンであった人が新たなリマスタリングで聴いてみたくなる曲というような視点もそこにはあるのかもしれない。

砂原良徳によるリマスタリング

ここからはYMOファンとしての視点での感想になるが、今作を聴いて自分がこれまでに聴いていた99年のリマスタリング音源との違いに驚いた。

それぞれの楽器の音が他の音に潰されることなく、音の解像度が鮮明になったと言えば適切なのか、それまで720pで見ていた動画を4Kで見るかのような驚きがあった。

「ここでこんな音鳴ってたのかよ!」「これ本当はこういう音だったのかよ!?」という具合に新たな発見があり、重なり合う音、ディティール、その輪郭を観察して楽しむことができるものに仕上がっていた。

10曲目の「CUE」などは「えっ、これもとからこんな音だったっけ!?」と思ったほどだ。それまで曇り空だったところに日差しが差し込んだかのような、爽やかさすら感じさせるサウンドに変化している。

これまでもマスタリングの異なる音源を聴き比べたりしたことはあるが、こんなに顕著にその違い、変化を実感するとは思っていなかったので結構驚いた。そのくらい聴き馴染んだ楽曲に新たな表情を浮かび上がらせるリマスタリングになっている。

この驚きはしかし、砂原良徳の手腕はもちろんだが、自分がYMOファンでここに収録されている楽曲も繰り返し聴いてきたものばかりだということも大きいだろう。昔はリマスタリング音源を楽しむなんて、あまりに些細でマニアックなことに思えて理解できなかったが、こういうことだったのかと今になってわかる。

まとめ

前述したようなYMOのパブリックイメージを作り上げたサウンドを聴きたいのであれば今作よりも、1stアルバムの「イエロー・マジック・オーケストラ」(1stには有名なジャケットのUS版もある。)か2ndアルバムの「ソリッド・ステート・サヴァイバー」を聴いた方が良いだろう。

しかし、初期のYMOや、その代表曲しか知らない人と後期のYMOも知っている人では、その音楽性の理解が全然違う。

やはりファンとしては、YMOの幅広い音楽性を伝えてくれる、この「NEUE TANZ」をおすすめしたくなるのだった。

【追記】

また別のYMO40周年企画として、ダフト・パンクなどを手掛けるマスタリング・エンジニア、Bob Ludwigによってリマスリングされたものが再発されていますが、こちらの場合は音がより明確でタイトになって、メリハリのあるノリの良い音楽になっているという印象を受けた。ダンス・ミュージック的な面が強く出ているという感じ。

イエロー・マジック・オーケストラ〈US版〉(2018 Bob Ludwig Remastering)

一方で99年のリマスタリングの方がゆるい開放感みたいなものがあったと感じたりもするんだけど、なんにせよ色々スタイルの違いがあっておもしろいなと思う。

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